長崎の鐘殺人事件

 

「長崎の鐘殺人事件」  吉村達也

 

 

 

先日、ミステリ作家の吉村達也が亡くなったのには驚かされました。まだ60才。残念です。かなりの多作家で知られる方でしたね。しかも早書きの異名を持ち、多くのシリーズキャラクターを自在に駆使し。読みやすいので愛読しておりました。

 

 

 

それもそのはず、この方の前身はフジテレビ系列のテレビマン。テレビはスピードの求められるメディアですし、時間との勝負の面がある。限られた時間で次々にアイデアを出していかないといけない厳しい職場が、小説に活躍の場を移しても、作品作りの姿勢につながっていたような気がしますね。

 

 

 

それだけにこの長崎の鐘殺人事件は興味深い。シリーズキャラクターの朝比奈耕作物の一編なのですが、扱われるテーマは長崎の隠れキリシタン。そのウンチクが凄い。よくぞ調べました。またクリスチャンの医師で被爆なさった永井隆博士の逸話も織り込まれていて、クリスチャンには興味深い。

 

 

 

隠れキリシタンに限らず、信仰には長い時間をかけて成熟されてきた伝統があります。一方で急速に変化する現代社会では福音宣教のスピードアップが求められる。ゆっくり培われてきたよき伝統を壊すことなく、福音宣教に関してはギアを最大加速させる。この辺の兼ね合いは難しいですよね。

 

 

 

スピードの世界に身をおいてきた著者だからこそ、長崎の隠れキリシタンの長い伝統に惹かれたと考えるのはうがちすぎでしょうか。もしかしたら、現代人は劇的な変化にもてあそばれながらも、心の奥底では変わらない価値を求めているのかもしれません。