聖アウスラ修道院の悲劇

 

二階堂黎人

 

題からして思い切りキリスト教です。何せ舞台が修道院。外国ではありません。長野県の野尻湖にある架空の修道院が舞台です。実際、野尻湖の周辺は宣教師の保養地ですから雰囲気は伝わってきます。

 

 

 

著者を説明する前に、87年から始まったミステリの潮流を説明したほうがいいでしょうね。新本格ブームと言うのです。綾辻行人の「十角館の殺人」が上梓されたのがこの年。これは松本清張風のリアリズム犯罪小説ではなく、復古調の探偵小説の復興を目指したものでした。講談社の名物編集者が仕掛け人でしたが、この流れに乗ってデビューした一人が著者です。

 

 

 

名探偵の二階堂蘭子がシリーズキャラなんですね。この蘭子が、横溝正史や江戸川乱歩を彷彿とさせるような怪奇事件を解決していきます。古臭いことを作者も意識しているのか、時代も1960年代から70年代あたりが設定されています。なんとなく劇画調と言いましょうか。

 

 

 

トリックが大好きな人は好みかもしれません。あとミステリの怪しげな雰囲気が好きな人とか。この小説でも面白い密室トリックが出てきますし。しかし、この小説の醍醐味は修道院に隠されたとんでもない秘密。真相を知ったときは開いた口がふさがりませんでした。クリスチャンなら、信仰について考えたり、より楽しめたりするのかもしれません。

 

 

 

もちろん、エンタメ小説ですから、メッセージ性も思想性も一切なし。読んで楽しめばいいのだと思います。そう言えば、今や、キリスト教でさえ、一般社会ではエンタメ化されているとの意見もありますね。これに眉をひそめる向きもあるでしょうが、僕自身はどんなメディアを通してでもキリスト教に触れて欲しいと思っているのです。

 

 

 

いや、冗談ではなく、一般の方はこういうものを読んで、教会に来るのかもしれない時代。サブカルチャーに弱かったら、対話ができないことがあるのかもしれませんよ。