アイルランドの薔薇

 

 石持浅海 作 

 

ミステリに興味のない方には誰得情報ですが、クローズトサークルというテーマがあるのですよ。館とか島とかに嵐やら吹雪やらで閉じ込められてしまい、限られた登場人物の中で事件が発生する。アガサクリスティの「そして誰もいなくなった」とかマンガの金田一少年とかに出てくるシチュエーションだと思って頂ければ。 

 

しかし、道具立てが、山荘だの孤島だのいかにも古典的ですよね。このクローズドサークルを現代風にアップデートしたらどうなるのかと考えたのが著者です。事件はアイルランドのなんの変哲もない宿屋で起きます。人里はなれた村でも絶海の孤島でもありません。町の一角。 

 

ところが、町はカトリック側とプロテスタント側の紛争の最中。宿屋に過激派の客がいたからさあ大変。警察に乱入されたら、自分たちが困る。自分たちは絶対殺していないと言い張り、外部との連絡を遮断してしまいます。巻き込まれた客は仕方なく、この閉鎖空間で犯人を自分たちだけで探さないといけないはめに。

 

 よく考えられています。アイルランドに舞台を持ってきたアイデアの勝利です。そして警察が入り込めない設定も秀逸。それでいて古典的なクローズドサークル物は成立している。面白いです。

 

 アイルランド紛争は日本人にはよく分からないことが多いのですが、読むのにそこはあまり気にしなくていいかも。重いテーマではなくただのエンタメ小説ですから。