螺旋スパイラル

 

山田正紀作

 

 SF小説は全く読まないのですよね。ただの食わず嫌いかもしれませんが。著者は基本的にはSF作家です。キャリアも長い。ところが、1980年代あたりから、SFとは近接分野であるミステリの世界にも進出してきました。それもかなりの傑作。「女捜査官シリーズ」の五部作などはどれも凄くて唸りました。

 

 さて、本作は旧約聖書が主なモチーフになっていますね。房総半島で建設中の地下水路。環境調査に訪れた学者の怪死事件が発生します。ところが死体がいつの間にか消える。しかも現場は途中どこにも出口のない水路。言ってみれば巨大な密室状態から死体はどうやって消えたのか。

 

 事件前にあらわれたモーセを名乗る怪人物との正体は。放浪の予言者はこの地こそ創世記の土地だとの謎の言葉を残します。そして旧約聖書のエピソードと奇妙に符号する事件の謎。著者のミステリはSF作家らしく壮大なのですよ。一種のメタファーになった叙事詩のようにさえ読めます。

 

 映画十戒を見た世代なら、モーセと聞いてもピンと来るのでしょうが、さて現代の一般の読者は旧約聖書の予備知識をどこまで持っているかですね。そういう意味でクリスチャンこそ楽しめそうな作品。僕の願いはこういうものから、聖書に興味を持って読んで下さる人がいればいいなあとは思うのですが。