サマーアポカリプス

 

笠井潔作 

 

「殺人事件を娯楽の対象にするミステリはけしからん」。眉をひそめる真面目な方の言い分はわからないでもありません。しかし、ミステリの源流の欧米の文化をたどると、キリスト教文化に行き着きます。そこには殺人は最大のタブーだからこそ罰されねばならないとの十戒以来の不文律が。

 

 

 

著者は言います。現実世界においては軍国主義のファシズムも共産主義も無意味で不条理な大量死をもたらしてきたではないかと。ところが、ミステリの世界には動機がある。被害者は意味のある死の栄誉を与えられているではないか。詭弁めいていますが、深いですw

 

 

 

さて、本書です。舞台は南フランスです。中世の異端カタリ派の聖地を舞台に、ヨハネの黙示録の四騎士のエピソードになぞらえた殺人事件が起きます。日本人の名探偵矢吹駆の推理やいかに。

 

 

 

完全に宗教ミステリです。ヨーロッパの精神史の闇をたどる試みも壮大。おまけに哲学者のシモーユヴェイユまで登場するし、著者の博学ぶりには舌を巻きます。探偵役と犯人の思想の対決という様相を呈するので、哲学的ミステリと言えばいいのでしょうかね。本当は第一弾の「バイバイエンジェル」から読むともっと楽しめるかもしれません。

 

 

 

それにしても、ヨハネの黙示録は多くのクリエイターのインスピレーションを刺激するようですね。面白いと思った人は是非、聖書にも手をつけて欲しいのですが。著者はもともと学生運動のイデオローグ。共産主義のユートピアの夢は源流は黙示文学と言ってもいいでしょうね。だったら、著者が黙示録をテーマに取り上げるのも無理はないのです。はい、すみません。牽強付会です。 _(_^_)_