時間を忘れて森へゆこう

 

光原百合作  

 

著者は童話作家出身です。しかもカトリックの女子パウロ会からもたくさん本を出しておられます。クリスチャンだとは伺っていませんが、どういう人脈なんでしょう。珍しいミステリ作家さんですよね。

 

 

 

探偵役はキリスト教系施設の自然観察指導員です。郊外学習で八ヶ岳山麓にあるキリスト教施設を訪れた女子高生が森に時計を落としてしまいます。それがきっかけでこの青年と出会い、次々と事件を解いていく連作短編。

 

 

 

この小説を読むのに向いている人は、まずミステリビギナー。いわゆる日常の謎系ですから血なまぐさい殺人事件は起きません。ご安心を。さすが童話出身です。それから自然好きなネイチャー派の方。なんといっても森が舞台です。動物も植物も出てきます。八ヶ岳です。爽やかです。

 

 

 

それから、クリスチャンの方ならより楽しめます。牧師も教会も出てきます。わたしなどはこの施設のモデルはどこだろうとか、八ヶ岳のキリスト教の歴史とかストーリーに関係のないところにまで興味が出てきてしまいます。

 

 

 

ミステリとキリスト教は切っても切り離せません。一般的には殺人事件や不可解な謎によって日常生活がカオスに陥る。それをコスモス(秩序)へと収めるのは、知恵によってロジックを駆使する名探偵。カオスからコスモスへ。まるでキリスト教神学の世界ではないかと思ったものです。そもそも一説によるとミステリの原型はダニエル書外典にまで遡るとか。

 

 

 

日本は有数のミステリ王国。ある面でその質はもはや欧米を超えているかもしれません。だったら、是非ミステリの源流たるキリスト教へ。クリスチャンのミステリファンのささやかな願いです。